桓温奇骨 鄧艾大志
晋書にいう。
桓温あざなは元子、譙國龍亢の人である。
生まれて一年も経たないのに、温嶠がこれを見て言うには、
「この子は気骨がある。試しに泣かしてみせてくれ」と。
その声を聞いてから言った。
「真の英物である」と
父の桓彝は温嶠が賞したのを理由に温と名づけた。
温嶠は笑って言った。
「果たしてそうなったら後に私は姓をかえないとな」
桓温は豪爽にして風格があり、姿貌はとてもすぐれていた。
顔に七星（ななつの黒子）があった。
若くして劉惔と仲が善かった。
劉惔はかつて言った。
「桓温の眼は紫石稜のようで、鬚は蝟の毛のように尖っている。孫仲謀、晋の宣王（司馬懿）の流亜である」
南康長公主をめとり、駙馬都尉を拝命し、大司馬南郡公で（生涯を）終えた。
魏志にいう。
鄧艾あざなを士載、義陽棘陽の人である。
幼くして家は貧しかった。
高山大澤を見るたびに、軍営の処所を測ろうとした。
時の人の多くは笑った。
後に尚書となった。
この時、田を広め穀物を備蓄し、賊を滅ぼそうとして、鄧艾を陳項より東の寿春に至るまで派遣した。
鄧艾は「田が良く水が少ない地の利を活かしきれない。河渠を開くために、水を引いてきて灌漑し、大いに軍糧を積んで、また運漕を通じさせるべきである」と思った。
そして済河論を著し、その指針を表明した。
後に漕渠を開き広めた。
東南に何かあって軍を興すごとに舟を浮かべて下り、江淮に達した。
資材食料が蓄えられ、水害が無いのは、鄧艾の建議の結果によるものである。
征西将軍に累遷して、蜀を征伐して大いに破った。
劉禅は降服した。
軍功により太尉に昇進した。
鍾會がその威名をねたみ、陥れようとして、ついに殺害された。