呂端（りょ たん）　
清泰二年（935）〜咸平三年（1000）
字・易直
謚・正恵
幽州安次の人
父呂�gが後晋の兵部侍郎だったことから、官途につく。
小事は糊塗するも大事は糊塗せずと言われた。



太宗が危篤となった。
李太后と宣政使の王継恩は太子が英明なのを嫌って、参知政事の李昌齢、殿前都指揮使の李継勲、知制誥の胡旦等と謀って潞王の趙元佐を擁立しようとした。
太宗が崩御した。
太后は王継恩を使者にして、宰相の呂端を召した。
呂端は異変が起こったことを悟り、王継恩を閤内に縛りつけ幽閉し、見張りをつけてから参内した。
太閤は言った。
「陛下はすでに崩御なされました。後嗣を立てるのには、年長者をもってするのが順序でしょう。どうしましょうか」
「先帝が太子を定められたのは、こういうときのためです。天下をお棄てになられ（亡くなられ）たからといって、先帝の遺命に背き、異議をとなえて良いものでしょうか」
と呂端は答え、太子を迎えて即位させた。
そして李継勲を使相として陳州へ赴任させ、李昌齢を忠武行軍司馬、王継恩は右監門衛将軍として均州に蟄居を命じ、胡旦は官位を剥奪して、潯州へ流刑とした。
そして真宗は即位すると、簾の後ろから羣（群）臣を引見した。
呂端は殿下で立ったままで拝さなかった。
そして簾をあげることを請うて、殿に昇って姿をしっかり（本物の真宗であると）確認すると、階を降りて、群臣を率いて万歳と叫んだ。



趙普が中書令だった時、呂端は参知政事となった。
趙普はかつて人に語った。
「私は常に呂公の上奏を観ていると、褒められても喜ばず、やり込められても懼れず、また言葉にあらわさない。真に台輔（大臣）の器だ。」



李継遷（元節度使の叛逆者）の母を捕虜とした。
太宗は枢密副使の寇準だけを召して対策を練った。
寇準が退出すると、呂端は寇準を宰相府に呼んで言った。
「帝が君を呼んだのは何についてかな」
「李継遷の母を得たことですよ」
「君はどうするつもりかな」
「私はこれから保安軍の北門の外で斬ろうと思います」
「そのようにするのは謀計に通じてない者のやることだ。できれば君はゆっくりとやってくれ。私が今からこのことについて上奏するから」
そして上奏して言った。
「昔、項羽は太公を得て、これを煮殺そうとしました。すると漢の高祖はその羹を一杯くれと言いました。大事をする者は最初から親を顧みることはありません。言うまでも無いことですが李継遷は胡夷（異民族）で悖逆の人です。陛下、今、李継遷の母親を殺せば李継遷を擒に出来るのでしょうか。出来なければ怨讐が増してますます叛心を堅くするだけです。延州に置いて、よく面倒を見、李継遷を帰順させるべきです。降服させることが出来なくても、心を残すことになります（過激になれない）。母親の命は我等が握っているのですから」
これを聞いた太宗は脾をうって善しとして言った。
「卿がいなかったら、朕は誤るところであった」
そして呂端の策を用いることにした。