紕漏篇


王敦が公主を娶った当初、厠へ行って、漆の箱に乾燥棗が盛ってあるのを見た。
これは鼻に詰めるものである。
王敦は「厠にも果物を置いている」と思った。
そしてすべて食べてしまった。
厠から戻ってくると、婢達が金の盥に水を張り、瑠璃のお椀に澡豆(豆の粉で作った洗い粉)を盛り捧げ持っていた。
なので澡豆を水中に投げ入れ飲んだ。
乾飯だと思ったのだ。
婢達は口をおおって笑わない者はいなかった。


元皇帝(司馬睿)が初めて賀司空(賀循)に会うと、話が呉の時の話になり、次のように問うた。
「孫晧が焼いた鋸で賀なにがしの頭を斬ったらしいが誰だったか」
司空がまだ答えないうちに元皇は思い出した言った。
「そうだ賀邵だ」
司空は涙を流しながら言った。
「私の父は無道に遭遇し、親を失った痛みは深く、ご下問に答える事が出来ませんでした」
元皇は愧慙して三日も引きこもって出てくることが出来なかった。