軽詆篇


王太尉(王衍)は眉子(王衍の子の王玄)に問うた。
「お前の叔(おじ)は名士である。それなのにどうして尊重しないんだ」
王衍は答えた。
「終日でまかせばかり言っている名士なんていますか」


庾元規(庾亮)は周伯仁(周)に語って言った。
「人々は君を樂になぞらえているよ」
「どの樂かね。樂毅か」
「ちがう。樂令のことだ」
「どうして無塩の醜女を飾り立てて西施に突きつけるのか」


深公(竺法深)は言った。
「人は庾元規を名士というが、胸中にはとげが三斗ばかりある」


庾公(庾亮)の権能は重く、王公(王導)を圧倒するほどであった。
庾亮は石頭にいて、王導が治城にいて座っていると、大風が塵を巻き上げた。
王導は扇で塵を払って言った。
「元規が塵で人を汚す」