仇隟篇


孫秀は、石崇が緑珠をくれなかったことを恨み、また藩岳が昔礼遇しなかったことを憾んでいた。
後に孫秀が中書令となると、藩岳は中書省内で孫秀を見かけたので呼んで言った。
「孫中書令は昔の周旋を憶えておられますか」
孫秀は言った。
「中心はこれを蔵しています。いつになってもこれを忘れないでしょう」
藩岳はここにおいて必ず免れない事を知った。
後に石崇と歐陽堅石(歐陽建)とをとらえ、日を同じくして藩岳もとらえられた。
石崇がまず刑場に送られ、互いのことは知らなかった。
藩岳は遅れて送られてきた。
石崇は藩岳に言った。
「安仁(藩岳)、あなたもそうなのですか」
藩岳は言った。
「白首帰るところを同じくするというやつだよ」
藩岳の金谷集の詩に、「分を投じて石友に寄せ、白首帰るところを同じくする」とある。
すなわち、その讖をなしたのだった。


劉輿兄弟は、わかい時、王トに憎まれた。
かつて二人を召して邸に泊まらせ、彼等を除こうと思い、坑を掘らせた。
坑が掘り畢わり、害そうとした。
石崇は以前から劉輿、劉琨と仲が善かった。
王トの家に二人が泊まっている聞き、まさに変がおこると察し、夜に王ト邸へ向かい訪ね、二劉の所在を問うた。
王トは逼迫していたので隠す事が出来ず言った。
「奥にいて眠っているよ」
石崇はすぐに入って、自ら二人を牽き出し、同じ車に同乗して去った。
そして二人に語って言った。
「少年よ、どうして軽々しく人で泊まるのか」