汰侈篇


石崇は客をむかえて宴会をひらくたびに、いつも美人に酌をさせた。
客で酒を飲み干さない者がいると、黄門(宦官)に命じてかわるがわる美女を斬らせた。
王丞相(王導)が大将軍(王敦)とともに石崇を訪ねたことがあった。
王導はもとから飲めなかったが、勉強して(無理して、頑張って)泥酔するに至った。
王敦は杯が巡ってくるたびに固辞して飲まず、なりゆきをみていた。
すでに三人斬られていたが、顔色はまったく変わらず、それでも飲もうとしなかった。
王導は王敦を責めた。
王敦は言った。
「自ずから自分の家の人間を殺しているんだ。どうして貴方と関係があるのですか」


石崇の邸の厠にはいつも十余の婢が並び控えており、皆綺麗なに着飾っていた。
甲煎粉、沈香汁のたぐいが置いてあり、備わっていない物は無かった。
新しい服を与えて着替えて出て来させたが、客の多くは恥ずかしがって厠へ行けなかった。
王大将軍(王敦)は行って、古い服を脱ぎ、新しい服を着て、表情は傲然としていた。
婢達は次のように言いあった。
「この客は必ず賊(謀反)を為すでしょう」


武帝(司馬炎)は王武子(王済)の邸へ行幸した。
王済は料理をだすのに、すべて瑠璃の器を使い、婢子百余人は、皆綾衣を纏い、飲食物を捧げ持っていた。
蒸し豚が美味で味が普通ではなかった。
司馬炎が不思議に思い問うと、王済は答えて言った。
「人の乳を豚に飲ませているのですよ」
司馬炎は非常に不快に思い、食事を畢えずして立ち去った。
王(王ト)、石(石崇)もまだやったことないことであった。