公儀休列伝
公儀休というのは魯の博士であった。
高弟をもって魯の宰相となった。
公儀休は法律を信奉し、道理に従い、旧制を改めることなく、百官は自然と正された。
禄を食む者が民と利益を争うこと、収入の大きい者が小さい者から搾取することは禁じられた。
或る日来客があって、客が魚を送ったところ、公儀休はそれを受けなかった。
客は言った。
「聞くところによるとあなた様は魚がお好きとのことですので、魚をお贈りしましたが、どうして受け取ってもらえないのでしょうか」
公儀休は答えて言った。
「魚が好きだから受け取らないのです。今、宰相の位にあるため自力で魚を得ることが出来ます。今、魚(賄賂)を受け取ってそれが原因で免職になったら、いったい誰がまた私に魚を贈ってくれるでしょうか。だから私は受け取らないのです」自家栽培の野菜を茹でて食べてみたところ非常に美味であったため、畠の野菜を抜いて捨てさせた。
また家で織った布があまりに見事だったのでそれを織った家婦(婢女)に暇を出し、機織機を焼き捨てさせて言った。
「農夫や工女たちに、彼らのつくった品々をいったいどこへ売らせたらよいというのか」